オーストリアのこと_お菓子の家のこと

小さい時に読んだお菓子の家のはなし。
大人になった今、さすがに食べたい!とは思わないけれど
まるでお菓子の家のようなおうちがあったら見てみたい!

今日は絵本から飛び出した、お菓子の家のような建物のこと。


場所はオーストリア、ウィーン。

音楽や芸術の街として知られるここに、その建物はあります。


まるで子どもが描いた絵のような楽しい窓!




外観はもっとユニーク!


これはフンデルト・ヴァッサー(Hundertwasser 1928-2000)

というオーストリアの画家がデザインした建物。

名前はクンストハウス ウィーン。

1991年にできた建物で、美術館として使われています。


外観は白黒の格子のようなイメージ。

でも不思議と怖いイメージはありません。



よく見ると、格子といってもマス目のような直線的なものではなく

ぐにゃぐにゃと曲がったような自由な形。

様々な形のタイルが組み合わさってつくられています。

この自由さが楽しげな理由?

画家、がデザインしたからでしょうか。



こちらがエントランス。

入口の柱はまるでビーズみたい。



一歩足を踏み入れると、建物の中も楽しい世界が広がります。


床のタイルや、


階段の手すり。



壁にはガラスやタイル、木や金属にいたるまで、

あらゆる素材が同居している。



なんだか不思議な魅力。

元は家具工場だった建物を改装したそうですが、

もはやそんなことがわからないくらい、独特の世界観が表現されています。



中庭は気持ち良さそうなカフェになっていました。

椅子もカラフルでかわいい。


美術館として使われているけれど、

建物そのものも充分ひとつのアートのような

そんな魅力的な建物です。



もうひとつ。

彼の代表作が、クンストハウスのすぐ近くにあります。

その名もフンデルトヴァッサーハウス (Hundertwasserhaus)。



バッチリ標識があるのですぐにわかります。



先ほどのクンストハウスウィーンと同じように自由な形と配色。

こちらは青、ピンク、黄色とカラフルな色合い。


なんとウィーン市の市営住宅(!)なのです。

今も実際に市民が住んでいます。
(少し汚れてるのが残念…)


市がこんな建物を?

そう、ウィーン市長が彼に声をかけたことが始まりで

1977年から約8年の構想を経て作られました。




こちらが表通りの外観。

ここでもビーズのような柱。ぐにゃりと曲がったデザイン。




でも、なぜこんな楽しい建物を?

それには彼の生い立ちが少しばかり影響してるかもしれません。

母親がユダヤ系だった彼。

ナチスドイツの影響により、迫害の恐怖にさらされながら

ユダヤ人街の暗い地下室で幼少期を過ごしました。


大人になり画家として世界を回ったのち、
故郷ウィーンに戻った彼が見たのは無機質な現代建築。
四角く灰色のそれらが、彼にはまるで刑務所の様に見えたといいます。

こんな街ではいけない、ということで画家ならではの自由な発想で建物のデザインを始めたのでした。



さきほどのフンデルトヴァッサーハウスを通りから見てみます。

確かに楽しげだけれど、うまく街並みに馴染んでいます。

そして ベランダから、屋上から、あちこちから木が飛び出している。



フンデルトヴァッサーは、都会でも木々や土のある生活ができるようにしたい

と考えていましたが、

ウィーンの街の中心部には庭のある一軒家などはほとんど見あたらず、集合住宅ばかり。

そこで、庭がないなら屋根やベランダに草や木を植えればよいと構想を練ったそう。



街を歩いていると、ちょうどフンデルトヴァッサーハウスの目の前に、

こんな建物がありました。



きっと彼の思想に共感し、敬意を払ったどこかの建築家の作品。

都会でも緑のある生活を。



音楽や芸術を大切にするウィーンだからこそ、

市長さんは画家におもしろい建物のデザインを依頼し、

そうしてできたユニークな建物をみんなで大事にしていくことが

できるのかなと思いました。




だって、街なかにこんなに面白い椅子があったりするんですから!

nokoto

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yoko_nokoto

一級建築士。
インテリアコーディネーター。
メディカルハーバルコーディネーター。

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