デンマークのこと_夕方のこと
夏の夕方。
北欧の夏は夕方が長い。
ゆっくり、ゆっくり、
時間をかけて昼から夜になっていく。
緯度が高くなるとどんどんゆっくりになってやがて太陽が沈まない白夜になる。
その時間は数時間にも及んで
それがあんまりにも綺麗だから、
誰だって夕方の綺麗さに気づかされます。
赤と青の絵の具を混ぜて、
ほんの少し紫を加えたような
この色が北欧の夕方の色。
そしてこの色の美しさは、
北欧の人もちゃんと知っていて、
こんな所で見つけることができます。
わかりますか?
ペンダントライトの中、
綺麗な青紫色が見えます。
これは1874年創業のデンマークの照明メーカー、
louis poulsen (ルイスポールセン)の超有名な照明。
PH5 (ピーエイチ ファイブ)です。
1958年にポール・ヘニングセンというデザイナーが作りました。
彼は、自然の太陽光を一番美しいと考えていて、
人工の電球の光を、なんとか自然の光に近づけようと
デザインや物理学的な計算などにより様々な工夫を凝らした照明を生み出しています。
そんな工夫のひとつとして、
美しい夕方の色を、そっとシェードの中に仕掛けたのだと思います。
しかも、下からよく見ると
赤と青のシェード(傘)が組み合わされて
そこを通った光がそれぞれ混ざり合って、この夕方色を再現しているのです。
この仕掛けに気付いた時、正直ちょっと身が震えました。
他にも、
まぶしくないこと
人や空間が一番美しく見える光であること
適切な影を形づくること
適正に色を再現すること
という機能を追求しながら
デザイン的にも優れた照明をたくさん世に生み出しました。
天井にUFOみたいな照明をくっつけて
明るければ良し、とする日本の考え方とは少し違う。
デザイナーだけでなく、みんなが同じような考えのようで
ルイスポールセンの照明はお店や街でたくさん出会うことができます。
これも暖かい街並みを形作るヒミツ、
かもしれません。
こうして、デンマークはゆっくり夜になっていくのでした。
※1枚目の写真はスウェーデン ストックホルムの市庁舎です。
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